ピロリーナの「今日もくじら日和」

『風立ちぬ』を観て

風立ちぬ。

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わたしの心に深く落ちた色は、群青色でした。

 

主人公、堀越二郎の人物像、飛行機を作るために生まれてきた男。それ以外は不器用。
でもそれがなお愛しい。飛行機を作る二郎は、商売も関係ない、戦争も関係ない
ただ美しい飛行機が作りたくて、あの時代にたまたま生まれてきただけなのだ。

 

あの時代の貧困を描かなければいけないのか?
飛行機のことだけ考えてる男は許されないのか?

 

彼にとっての優しさや愛情は、あれで精一杯なのだ。
私には十分に伝わってきた。
悲しみを乗り越え狂気とも思える力で飛行機を作り上げ成功したんだと感じた。

 

中盤「わかった、わかったから、あなたが飛行機好きなのは十分よくわかったから」
と思う時もあったが(笑)

 

後半にヒロインの菜穂子が出てきて、
その私の想いは菜穂子が全て受け止めてくれた。

 

私は楽になったが、菜穂子が辛くなった。
でも、2人のやり取りを見ていたら何もかも美しかった。
刹那的に美しい。
私は2人のシーンで何度も泣いた。

 

最後、飛行機を作り続け、一機も戻ってこなかった、という二郎。

 

ひたすら作って、作って、作って、
彼の手に残ったものはなんだったのか。

 

どんな状況でも、彼女を傍に置いて、
飛行機を作り続けるしかなかった。
それがエゴなのか?

 

美しくて残酷な、いろんな色を複雑に感じ取ったこの映画。

空の青さ、白さ、草原の緑、恋するピンク、
でも時折り深くて汚い灰色が覗くのだ。

 

そして、私の心に残った群青色。

 

戦争は、こうやって知らない間に起こるんじゃないんだろうか、
と思ってしまった。

 

自然災害のように、地震のように、大雨のように火山の噴火のように・・・
自然だから、しょうがないね、なんて。
戦争が自然にやってきた、と。瞬く間に。他人事のように。

 

そうならないように、願う。

 

 

about: pirolina
くじら料理研究・くじらの美味しい食べ方を提案。実家は長崎の日野商店。明治41年創業。幼い頃から鯨肉工場の匂いが苦手だったが、鯨屋の世界に入り、くじらの扱い方で美味しさが変わることを知る。二児の母。
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pirolinaの『喜び働く大人の背中はワンダーランド』『鯨食系女子』を含む、クジラソング3曲入りの計10曲。iTunes/楽天市場/amazon/タワーレコード/HMV等全国CDショップ、ネットショップ等
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