「鯨について」:第5回「魚のまち長崎応援女子会」
長崎市の居酒屋さんなどでは、こんな暖簾が飾ってあります。見たことあるでしょうか?
鯨のまち、長崎であることをPRするこの、暖簾。長崎市が数年前から取り組んでます。
実は長崎は、全国で一番、くじらを食べる県。
くじらを余すことなく食べる日本の鯨食文化は世界でも類を見ない文化、
その中でも長崎が一番の消費率があるんです。ということは、世界一!?
でもその潜在的文化があんまり知られてなかったんですよね。
その謎を、日本のくじら会の重鎮と紹介された
(株)日野商店の会長、日野浩二が、「魚のまち長崎応援女子会」で講師としてやってきました。
(って私の祖父なのですが・・・ヾ(´ε `;)ゝ恐縮です)
82歳になる祖父。まだまだ元気で現役です。それでは簡単ですが、聞いた話をまとめます。
1 長崎のくじらは何故美味しいのか
長崎が裕福だったその昔の江戸時代は、長崎の五島列島、平戸、壱岐、対馬は
鯨の回遊が多い地域でした。鯨は網取り式で、湾の中に追い込む方式で捕鯨をしていたので、
島の辺ぴなところがその地形に合ったんですね。
その当時の長崎のくじら組は500人規模の大企業で、それが35社ほどありました。
山口県では4社、高知では2社、和歌山県の太地でも2社ほどだったので、
当時の長崎の500人×35社=17,500ほどが捕鯨の仕事をしていたわけです。すっごい。
そして、平戸、生月、五島で捕獲された鯨は、船で彼杵港に水揚げされていたそう。
彼杵は当時、鯨の仕分け基地、流通センターでした。
鯨肉はそこから陸路、佐賀や福岡、大村、諌早、島原などに分配され
長崎は彼杵港の対岸の時津港を経て、浦上街道を通って運ばれました!
その当時の長崎は経済力が強かったので、一番美味しい良い部位が分配されていたので
その文化が今も根強く残っているのです。
「長崎に行けば、美味しいくじらが食べられる」
と言われるのは、こういう理由があるからです。
2 鯨は工業製品ではない
そして現代、
「くじらは美味しい!」という人と
美味しくない商品に当たって「くじらは不味い!」という人が居ます。
(でも若い20代世代の女子はそういう概念すらありません。)
鯨は当たり外れが大きい、という実情。それはなぜか。
鯨は野うさぎと一緒、イノシシと一緒、野性生物なのです。
工業製品化した牛や豚などと違うのです。
でもその工業製品と同じように仕分けをして、機械でカットして
はい市場に並びました、となったら、当たり外れは出てきます。
長崎は、やわらかい、堅い、という仕分けの仕方、目利きで鯨を加工してます。
でも目利きができない他の地域や、鯨は全部同じだと思って加工販売していると
そういう会社は潰れていって、鯨の文化が途絶えていくんですよね。
長崎の魚屋さんは、年末になると、鯨を自分のところで炊いて加工してます(´◦ω◦`)
これは県外の人からみたらビックリかもしれません。
(年間の鯨3000tぐらいのうち400~500トンが長崎人が食べてます)
※現在、長崎近海では捕鯨はやっておりません。
(現在流通されているのは、調査捕鯨の鯨、沿岸捕鯨のくじら、アイスランドからの輸入された鯨です)
また、若いくじら、大人のくじら、年寄りのくじら、でも硬さが違います。
やわらかいのは、若い年齢のくじらです。しかもオスよりメスがやわらかい。
長崎は若いくじらの食文化です。
日野浩二は先代からの教えで「はらみ魚は目をつぶって買え」と教わったそうです。
理由は、簡単。鯨の孕み魚の肉は、大変やわらかくておいしいのです。
「鯨が捕れた」と産地から連絡があったら、それが孕み魚なら清水の舞台から飛び降りたつもりで、
少々高くても思い切って買い取りなさい、と教えられそう。
そして、鯨の肉片を見て、”この鯨は硬い”、”この鯨は軟らかい”
という肉の見分け方を徹底的に仕込まれたそうです。
これが出来ないようでは、長崎の鯨商人の資格はなく
鯨の肉は、ご馳走に違いありませんが、裕福な人たちは、硬いものは決して好みません。
長崎では、昔から、鯨の肉は、硬いか、軟らかいか、によって、価格がかなり開きました。
このことは、長崎の鯨食文化の一つではないか、と考えます。
でも近年この「孕み魚は目をつぶって買え」が実証されてきました。
お母さん鯨は、子供を産んでから4ヶ月間お乳を飲ませますが、
その時期絶食しているのです。(´◦ω◦`)
それがずっと謎だったんです、その鯨のパワーはどっから来てるのか・・・
つまりそのエネルギーは母くじらの細胞の中に蓄えれているわけですが
それがバレニンという成分であることがわかりました。
これはとても凄い発見で、人間の疲労回復、体力増進に効果があるとして
鯨肉が見直されてきてるんです。
ちなみに、祖父の話によると、昔もくじら肉は高かったそうです。
ただ、切れっ端は安かった。安い部位と高い部位が両方あったわけです。
でも今は全てが高くなってしまいました。
(試食に出した、長崎の地元で愛されている湯かけくじら)
3 こんなに美味しい鯨、なぜ政治利用されているの?
鯨肉の試食を出した後
「こんなに美味しいくじらを、なぜ捕っちゃダメになったんですか?」と
20代の若い女の子から疑問が上がりました。
これは、アメリカ×日本の戦争なんですね。と祖父は口を開きました。( ゚д゚ )
アメリカは、第二次世界大戦まで鯨油を取ってました。
でもその後、石油や植物性油脂を原料とする代替品が大量に製造され
鯨油が要らなくなってしまいました。
1970年代初め、アメリカはベトナム戦争の泥沼に入り込みました。
枯葉剤の大量投下と環境への壊滅的影響、反戦運動の盛り上がりと麻薬の蔓延、
脱走兵の続出等々、反米、反体制、反戦気運をなんとしても
方向転換させる戦略を考え出す必要があったのです。
その結果、作戦として自然保護が全面に打ち出されることになりました。
そしてその象徴としてクジラ保護に標準が定められ、
クジラは地球環境を守るためのシンボルとなりました。
自然保護に関してカリスマ性に富む多くの理論家、運動化が動員され、
それが1972年のストックホルム国連人間環境会議(地球サミット)の開催へとつながったのです。
国連会議では、アメリカの狙いどおりに捕鯨問題がメインテーマとなり
アメリカの提案による「商業捕鯨の10年間のモラトリアム勧告」が採択されました。
そしてその後は政治と金の問題ですね。
議員さんは、選挙で勝たせてあげるから、捕鯨反対してね♪と環境保護団体から言われたら
「うん、別に鯨はオレに関係ないしー選挙に勝ちたいしー」という成り行きです(´◦ω◦`)
科学的根拠がない理由「クジラ絶滅論」
(クジラは増えてます!!絶滅するクジラは捕ってません( ゚д゚ ))や
クジラが可哀相・・・などの感情論などいろんな切り口で捕鯨問題はありますが、
実際は政治的材料にされてしまったのです。
また、アメリカと日本の税制の違いが大きいです。
なぜ反捕鯨の環境保護団体にあんなに寄付金が集まるのでしょうか?
なぜ、捕鯨船に体当たりしてくる、大きな船が買えるのでしょうか?
例えば、簡単に言うと、日本では100億儲けて、税金が30億としたら
寄付は残りの70億から出すことになりますが・・・・
アメリカは、100億儲けて、税金が30億としたら、その税金から10億寄付ができます。
税金の中から寄付金が作れるのです。
寄付をすると名誉が残りますし所得は減らないので、
寄付金が集まりやすい仕組みになってます。
また、企業が何か環境汚染をした際でも環境保護団体に10億寄付しておけば
環境問題は鯨に矛先を向けたままで、自分たちを守ってくれることになります・・・・。
世の中って金で動いてるんですか?ええそうですね?って悲しい現実です。
でもね、だからと言って、そうですね、で終わるわけじゃぁーないんですよ私たちは。
確かに大きな力や金や不当な圧力や権力によって、どうにもならないこともある。
でも日本国内日本人にPRできなかった甘さがわが国にあったわけです。
諸外国ばかりに対抗していた日本でしたが、
「つーかそれじゃいかん、国内でPRできてないやん!」
だからそれをバカにされてるやん外国から~!と国が気づいたようです(;^ω^)
でもね、政治家や役人まかせにしていても始まりません。
どんな問題もそうだと思うけど、お上がやってくれるだろう・・という
他力本願な気持ちじゃいけないですよね。
変えていくのは国民一人一人の気持ちと行動です。
地味かもしれないけど、国内でPRできるように、少しずつでも私は努力する所存です。
私は負けません。
以上。
おまけ:試食する女子会メンバーたち
くらさきさんの名物!鯨カツ!もいただきました!
赤身にしっかり秘伝の味がしみ込ませています。
こちらは、くらさきさんの新商品のくじらたまご
長崎市内アーケードで1個100円で買えます!
ホクホクしてとても美味しかった(●´∀`)
★日野商店が運営する直営サイト
↓日野浩二の本が出版されてますのでご興味のある方はお読みください。
長崎文献社から『鯨と生きる~長崎のクジラ商 日野浩二の人生』。
長崎のクジラ商として半世紀を過ごした捕鯨文化の伝統から鯨肉製品の流通の裏側、
捕鯨規制の国際会議の内側まで語っております。
★「魚のまち長崎応援女子会」とは・・・・・?
女性が少ない漁業や水産加工会社に女性ならではのアイデアを生かそうと
去年11月に長崎市より発足されました。
広報、生産者、鯨販売、料理、水産加工、魚栄養、観光、商工
料理、学校、行政など様々な分野で活躍する女性メンバーで構成されており
長崎の魚を県内外にPRし、消費を増やすことなどを目標にしています。